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福岡県犯給付金不支給取消裁判 

控訴審判決についての犯罪被害補償を求める会の意見表明

 

令和7年12月11日、福岡高等裁判所は、夫を殺害された妻に対し犯罪被害者等給付金(以下「犯給金」という)の支給を認めた一審判決を取り消し、不支給とする判決を言い渡しました。

本件裁判を支援してきた犯罪被害補償を求める会は、この控訴審判決に対し、以下のとおり強い異議を表明します。

 

 本件の概要本件は、被害者夫妻が、夫の実父から包丁で襲われ、夫は胸部を刺されて死亡し、妻も背中などを刺される重傷を負った重大な犯罪事件です(内縁関係ですが、争点ではないため、以下「夫妻」といいます)。犯給法においては、いわゆる「親族間犯罪」は原則として給付対象外とされています。しかし同法施行規則は、事件当時、親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合には、例外的に給付を認める旨を定めています。一審判決は、犯給法の目的と立法経緯を踏まえ、被害者と加害者である実父との親子関係は事件当時すでに破綻していたと認定し、犯給金の支給を認めました。ところが控訴審判決は、これを覆し、親子関係はなお破綻に至っていなかったとして、不支給と判断しました。

 

 被害者遺族が訴えてきた具体的事実控訴審においても、被害者遺族である妻は、次のような具体的事実を繰り返し訴えてきました。

 

•お見合いとして設定された両家の顔合わせが、加害者の暴言によって破綻し、入籍ができなかったこと

•夫妻が住宅ローンを組んで取得した自宅敷地の庭を、加害者が無断で破壊・占拠し、家を建てたこと

•その結果、夫が約3年間うつ病を患い、就労できなかったこと

•義母死亡後、相続人である夫が、加害者の強要により相続放棄を余儀なくされたこと

•事件の約9か月前、被害者妻が庭の掃除中に、加害者が運転する自動車にはねられて負傷したにもかかわらず、治療費の支払いを拒否され、「当たり屋」と誹謗され、警察への告訴まで求められたこと

 

こうした深刻な対立の末、夫は刺殺され、妻も重傷を負い、2か月に及ぶ入院を強いられました。

現在も後遺症と事件の衝撃によるPTSDに苦しんでいます。

 

 二審判決の問題点控訴審判決は、これらの被害者側の陳述や事実関係の多くを採用せず、

「親子は人の身分関係として基本的かつ重要なものであり、親子間の情愛という根源的な感情やそれに立脚する社会秩序は、できるだけ維持尊重されるべきである」という価値観を前提に判断しました。

さらに、犯給法施行規則における「親族関係の破綻」という文言を、民法上の婚姻関係や親子関係の破綻と同義に解釈しました。

 

しかし、犯給法と民法は、立法目的も性質も全く異なる法律です。民法が将来の関係再構築の可能性を前提とするのに対し、犯給法は、すでに重大な犯罪被害が生じた後に、被害者や遺族の被った打撃を軽減するための救済法です。犯給法の適用において問われるべきは、被害者を救済すべき状況にあったかどうかであり、「理想化された家族像」や抽象的な情愛論ではありません。

 

 結論本件における客観的事実関係からすれば、加害者と被害者との親子関係が事件当時すでに破綻していたことは明白であり、一審判決の判断枠組みこそが、犯給法の趣旨・目的に忠実なものでした。本件控訴審判決は、犯給法の理念を無視し、被害者保護よりも抽象的な「家族観」を優先したものであり、著しく不当です。当会は、このような判断が前例として固定化されることに強い危惧を抱き、ここに明確に抗議するとともに、被害者救済の観点から是正されるべきであることを強く訴えます。

 

                          2026年1月25日 犯罪被害補償を求める会

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